真・T☆LOVE 〜滅亡の時〜
「ロビン、ステルスの風読みの機能は、持ちこたえられそう?」

ステルスの羽は、細かく分割されており、風を瞬時に分析し、最も安定した状態を自動で作ることができる。

「さっきは、一応機能したが、風が強すぎる。長くは持たないかもしれない」

「5分でいい。何とかもちこたえて。その間に私がハッチを開ける」

「開けるって言ったって、どうやって?」

「ステルスからケーブルを引っ張って行き、電源を供給するの」

確かに有効な方法ではあった。
しかし、極寒の嵐の海での作業である。

誰が考えても無茶であった。

「ラブ、いくらなんでもそりゃ…。おまえにもしものことがあったら、わしは大統領に殺されてしまうわ」

「おじいちゃん。私は、絶対に諦めない。分かってるでしょ。他に方法がある? ロビン、今すぐ行くわよ」

ロビンは、もう既にケーブルの準備に取り掛かろうとしていた。



~20分後、現場上空~

(予想以上ね…)

もう海中の救命筏を、上空から確認することは出来なかった。

「今からそのハッチを、外部からの電源で開きます。開いたら、躊躇せずに、海上へ脱出してください。あとは、ヘリが皆さんを助けます」

「ちょっとお待ちになって!ラブさん。あなたが来られるの?このあたりの海は非常にお寒くて、すぐに手の感覚なんてなくなりますわ。作業なんて無理でございます。私たちのことはもうかまいませんから、他の方達を助けてあげてください」

「ヴェロニカさん。あなた達を助けるのが、今の私の使命なの」

「…?…どうして私の名前を?」

「お父さんのラルフから、あなたを助けてって頼まれたの。ヴェロニカ、諦めないでって言ったでしょ。待ってて!」

この状況下で、冷静、的確に、そして「お上品に」喋るなんて、あの家系しか思い浮かばなかった。

ラブは、まだ喋ってくる無線を切った。

邪魔になる服を脱ぎ、胸を覆ったサポーターとショートパンツだけとなる。

そして、電源と繋がったケーブルを腰に縛り付け、機体のハッチを開けた。

外の体感気温は-20℃。

息も凍る様な寒さである。

「ロビン、シッカリ頼むわよ」

「やっぱりやめた方が・・・と言っても無駄ですよね。了解」

言い終わるより早く、ラブの姿は、真っ暗な海へと消えて行った。
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