真・T☆LOVE 〜滅亡の時〜
歌い人の中には、その声に独特の癒しの響きを持つ者がいる。

ラブもその一人であり、また彼女は、実に4オクターブ近い音域を持っていた。

誰もがラブの歌を聞き、切なく悲しい歌には涙を流し、激しく熱い歌には勇気をもらうのであった。

「ありがとう。ではオープニング最後の曲になります。この曲は、古典ミュージシャンのミカエル・シャーンさんが作ってくれた曲に、私が詞をつけました」

ラブの語りに、静まって行く場内。

「彼は、盲目のアーティストとしても有名で、古代より伝わる楽器で不思議な音色の音楽を生み出してくれます。この曲もきっと、みんな気に入ってくれると思います。聴いてください。『PEACE OF EARTH』」

聴いたことのないメロディに、ラブの声が調和する。力強く盛り上がったラストには、恐らくラブにしか出せない高音が響き渡る。

場内は一斉に、ものすごい拍手喝采に包まれた。

こうして、全5曲を披露し、ラブは次のアーティストへバトンを渡したのである。


~ステージ最後列~

「すいません、お客さん。録音はダメなんですよ~」

監視センターからの指示で、注意に来た警備員が、男に話しかけた。

「ご・め・ん・さ・い。×××・・・」

「外国の方ですか。まいったな・・・。まぁ、いいでしょ。私だって、ラブの新曲は欲しいと思いますからね。でも、もうやめてくださいね。きまりですから。では、楽しんでってください」

身振り手振りで、一生懸命に伝え、安全を確認した警備員は、やれやれと言った顔で、持ち場に戻って行った。
< 62 / 188 >

この作品をシェア

pagetop