真・T☆LOVE 〜滅亡の時〜
離陸後、30分ほど経った頃。

後部のトイレから出てきた金髪の乗務員と、先程搭乗口でもめていた女性が話している。

「・・・H3よ。任せたわ」

そこへ、

「すまん。通るよ」

男子トイレから出てきた、モジャ髭の男がすれ違う。

(空の上じゃ耳は聞こえるんだな。なるほど。H3か…)

苦笑いを浮かべ、男は、通路を挟んで、メイと横並びの席「H5」へと戻った。

両サイドには、黒スーツの護衛が並んでいる。

席についたモジャ髭が、通路側「H4」の黒スーツにささやく…。



~H2とH3~

「ねぇメイ。いいもの見せてあげる」

美樹は、ポケットから小さな袋を出した。

中には、小さな石が入っていた。

「きれいね。どうしたのこの石。高知のお土産?」

「ううん。もらったの。不思議な色でしょ。ちょっとトイレ行ってくるから。持ってて」

「いいよ。分かる?」

うなずいて、後方のトイレへと向かう美樹が、金髪とすれ違う。

トイレには、耳の《《聞こえなかった》》女性が入っており、美樹は仕方なくドアの前で待つ。

メイのもとへ、優しい笑顔の別の乗務員がやって来た。

「VIP席のお客さまがお呼びでございます」

「あっ、おっちゃんを忘れてたわ」

トイレから女性が出てくる。

メイは、とりあえず、美樹からの預かり物をジャケットの内ポケットにしまい、席を立った。

同時に、通路を挟んで隣の「H4」の黒スーツが立ち上がり、メイの背後でつぶやく。

「メイ様。振り向かずに、慌てず騒がず急いで、行ってください」

(また名指しかよ!私ってそんな有名人?)

振り向こうとするメイを男が阻止する。

「そのまま早く!」

尋常でない雰囲気を感じ取ったメイは、振り向かず、急ぎ足でVIP席へと向かう。

それを見届けて、男は席に着いた。

その横をトイレから出てきたあの女性が、メイの後を追う。
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