彷徨いエトワール
進路希望用紙を提出するように催促されるのが正直うんざりで、そこら辺にある近場の大学名でも書いておこうと思ったこともある。けれど、大学に行くのが当たり前みたいな風潮。そして大学を卒業したらそこそこの会社に就職するの、私は在り来りで嫌だ。
「でも、わたしにはこれといってやりたいこととかないんだよね」
幼稚園生の頃はたくさん夢があった。パティシエになりたい、保育士さんになりたい、お花屋さんで働きたい。
歳を重ねるにつれて、考えなければいけないことが増えた。ただ、すきだと言う感情だけではどうにもならないことを知った。現実は思っていたよりも複雑で、単純だ。矛盾した世界を受け入れなければならない。
これが大人になるってことなのかと考えた。でもまだ私は十七。未成年者だ。
「ときどき思うの。一体わたしは何者なんだろうって」
出口のない迷路を彷徨っている気分。四方八方、鏡に囲まれた中をいくら歩いても出口に辿り着かない。
自分自身ですら自分のことを見つけられないのだ。
特別な才能がほしかった。ぜんぶ、七十パーセントこなせる、埋もれるような存在じゃなくて、何か一つ秀でて百パーセントこなせるようなものがほしかった。
目の前に見える無数の星の一つではなくて、冬の大三角形の一つになりたかった。
そしたらきっと、自分が何者でなくとも悩まずに済んだはずだ。
「んー、大人かあ」