こんな溺愛,ありですか?
「さようなら」



私は生徒として挨拶をする。



「…先生?」



返ってこない返事に,歩みを止め,私は振り返った。

訝しげに辰馬くんを見つめると,何か考えるようにした辰馬くんは



「じゃあな,気をつけて帰れよ」



そう言って私の頭をくしゃっと撫でた。

髪をぐちゃぐちゃにされて少しの怒りを覚えながらも,私は可笑しくなって笑う。



「あははっ。さよなら,先生」



変なの。

私はこちらにじっと視線を向ける山宮くんの所へ向かった。



「お待たせ! ごめんね」

「別に,そんなに待ってない」



あれ。

さっきまでの辰馬くんみたいに,今度は山宮くんが不機嫌。

やっぱり遅かったのかな…

私は1人,ひっそりと反省した。
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