こんな溺愛,ありですか?
下駄箱にもたれて数分。

俺はくあっと小さなあくびをした。

なんとか2回目を噛み殺すと,足音と小さく話し声が聞こえる。

軽く首をその方向に向けると,やっぱりしーちゃんだ。

しーちゃんは俺に気づいて,担任に挨拶をする。



「さようなら」



「……先生?」



返事は返ってこず,そのせいでしーちゃんが訝しげに足を止めた。

担任は何か考えるような素振りを見せると,俺に視線を向けて



「じゃあな,気をつけて帰れよ」



そう言って限りなく気安くしーちゃんの頭を撫でた。

近所の兄ちゃんみたいな優しげな笑顔で。



「あははっ。さよなら,先生」



しーちゃんは特に嫌がらず,楽しそうにそれを受け入れる。

教師としてのスキンシップなら良い。

でも,俺のところに戻ってくるしーちゃんの後ろからあんな目を向けてくるのは,それ以上があるからじゃないの?



「お待たせ! ごめんね」



なにも気づいてないしーちゃんは,申し訳なさそうに眉を下げる。



「別に,そんなに待ってない」



待たされたとは思わないけど,なんかムカつく。

俺が答えると,何故かしーちゃんは肩を落として俯いていた。
          山宮side終
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