こんな溺愛,ありですか?
私は誰でも良かったけど,さすがに驚いた。

私達の席は近くなかったし,遠目でしか見たことがなかったから。

わっ格好いい…

それが,最初の感想。

周りからの羨望の眼差しを受けながら,私はその意味に納得した。



『あっ……えっと,山宮,さん? よっよろしくね』

『…よろしく』



返事が帰ってきて,私は驚きながらもホッとする。

これならやっていけるかも知れないって,そんなことを思った。



『なんでそんなにおどついてんの?』



山宮くんが不思議そうに首をかしげて,私もまた,山宮くんに声をかけられたことに驚いて呼吸が止まる。



『ごめんなさい。話したことないし,こういう時どうしたら良いのか分からなくて……』



中学の時とは違う。

周りは皆,知らない人。



『なんで敬語? 変なの。佐藤さんって,面白いね』



山宮くんが目を細めて,少年みたいに笑った。

なんで,私の名前知ってるんだろう。

私は惚けた頭で,そんなことを考える。

この時に,周りからの視線に好奇や敵意が混じるようになったのだ。
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