こんな溺愛,ありですか?
私はふいっと顔を背けて,



「いってきますっ」



と叫んだ。

背中から



「いってらっしゃい」



と返される。

廊下に出ると,もちろん辰馬くんがいた。

その手には何もなくて,わたしは窓の鍵かな? それとも別室にある荷物? と考えを巡らす。



「今日はなにしたら良いの?」

「……今日は手伝いじゃない。ついてこい」

「えっはい」



力強く私の手を引く辰馬くん。

どうかしたのかなと思いながらついていくと,いつもの3倍の速度で職員室に着く。

辰馬くんはそこで,どこからか取り出したタオルを水で濡らし,電子レンジにいれる。

ボタンで操作すると,ウーンと音がした。

何をしているのだろう。なぜ私は連れてこられたのだろう。

私は黙ってその作業を見つめた。
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