こんな溺愛,ありですか?
「しーちゃん,知り合い?」



私はその問いかけに,ぶんぶんと首だけ必死に振って応えた。

流石に怪しいと思ったのか,ゆっくりと男子生徒に寄った山宮くんが相手を拘束する。



「っいっ」



大して武力を持たないのか,その人はひょろっとした声をあげて簡単に捕まった。



「しっ知らないなんて嘘だ! なんで……だって静香さんはあの日,見つめていた僕に気付いてくれてっ……見つめ合ったじゃ,ないかっ」

「だから,いつ? しーちゃんがあんたと見つめ合ったのは」

「ぼ,僕が写真を見て一目惚れした次の日,だ」



だからいつなんだって,山宮くんは言うけど。

私は分かってしまった。

初めて視線を受けた,山宮くんが女の子達に怒った日。

ただ視線に反応しただけの私の行動が,まさかそんな風に受け取られていたなんて。



「それからどこにいても,静香さんは僕に気付いて視線を送ってくれた。話しかけてもいないのに……! もうこんなの,運命としか言いようがない! だからそれを……」

ー邪魔するなっ!



「やっ」



まみやくん。

振りかぶったその人の肘が,痛そうな音を立てて山宮くんの顎に直撃する。

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