こんな溺愛,ありですか?
おんなじクラス。

わざわざ下駄箱で待ち合わせる必要はないのだけど,今日は提出物があったから,ついさっき1度分かれたのだった。

凄く急いだから,山宮くんの言う通りそんなに時間は経ってないけど……

もうこれはくせみたいなもの。

だって恥ずかしんだもん。

"待っててくれてありがとう。じゃあ,帰ろっか"

そんな風に先導できる程,器用じゃない。



「じゃあ,帰ろ。どこか寄っていく?」

「ううん。でも,山宮くんちのパンが食べたいから,ついていってもいい?」



そうすれば,美味しいパンも食べられて,一緒にいる時間も長くなるから。

私の言葉だけで伝わってしまったんだろうか。

山宮くんの少しだけ血色がよくなった顔が,微笑みをたたえて。

きゅっと私の右手を繋いだ。



「じゃあ,ゆっくり帰ろ。その後も駅まで送るから」



全部,お見通しみたい。
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