こんな溺愛,ありですか?
肩に触れた水がちょっぴり冷たくて。

反対が,とてもドキドキする温かさで。

おかしくなった私は,ふふふと笑う。



「なに,話してたの」

「うーん,なんだろう」



特に交わした会話は無かったように思った。

パチャパチャと弾ける。

靴下が濡れて,息も乱れて。

でも,山宮くんとなら気にならなかった。

くすくすとまた笑うと,諦めたように山宮くんが立ち止まる。



「まあ,いいや」



息はすぐに戻って,だけど。

そのあと訪れた優しい静寂に,心臓だけが最後までうるさかった。

新しい友達が出来て,彼氏も出来て。

私が大人になるまで,あともう少し。

もう少しだけ私は,子供を卒業しようとする子供のまま(こうこうせい)

私は,恥ずかしいくらい好きが伝わってくる山宮くんの右手を,こそっそりと握り返した。


『こんな溺愛,ありですか?』
                ーFin
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