風船ガムぱちん
あたしの方にのびてくる手。
寄越せ、って言ってる。
声に出さなくたってわかる。
だって、毎日、こうしてる。
まったく、もう。仕方ないなぁ。
「まったく、もう。仕方ないなぁ」
あたしの声は「仕方ない」なんて感じは全然しなくて、むしろ嬉しそうに響いた。
机の横にかけてある通学カバンをわしゃわしゃとあさる。
ノートとか教科書とか、そういうのは全然入ってない。
でも化粧ポーチとか携帯とかiPodとか、そういうのが色々入ってる。
整理されてないカバンからやっと取り出したのは、ガムが大量に入ったレジ袋。
駅前のコンビニの。