協道結婚
「私、この家。正確には、ここの歴史を色々調べたの。でね、古くは江戸時代。ここには立派なお屋敷があって、進藤 吉右衛門って武将が住んでいたの」
誠が静華の方を向く。
静華は、天井を見つめている。
「その頃、ここの大名はひどい暴君で、お茶がぬるいってだけで、手打ちにしてたとか。吉右衛門は、剣の腕がたち、優しい人柄は、町民や農民からも慕われてたの」
(あれ?) 二人同時の違和感。
夜とはいえ、車や町の音が聞こえていた。
…さっきまでは。
気にしつつも話を続ける。
「彼には許嫁(いいなづけ)がいて、掛け軸に描いて貰ったほど、美しい人だったみたい。でも…ある日、その噂が大名に知れ、二人の仲は無理矢理に引き裂かれたの。」
結末を知る静華の瞳から、涙がこぼれた。
「大名をひたすら拒み続けた彼女は、縛られ、吊るされ、ひどい拷問まで受けたの。でも愛する人を信じて、必死で生きてた」
言葉が詰まる。
「大丈夫かい」
誠が静華のベッドに腰かけ、優しく気遣う。
流れる涙を脱いだバスローブの袖で拭う。
「ある夜、彼は大名屋敷に忍び込み、寝ている大名を暗殺。食事も与えられず、吊るされていたぼろぼろの彼女を救い出したの」
涙が溢れ出す。
「彼の邪魔をする者は誰一人いなくて、大名は病死とされたんだって」
なるほど…と誠は納得した。
「でもね……遅かったの。」
静華が奥歯を噛み締めるのがわかった。
「助け出した時は、もう虫の息で…ただ一度だけ、たった一度だけ、腫れあがった瞼を開いて彼の目を見たの。そして、最後の力で微笑んで…」
暫くの間、声が出せなかった。
「その夜ね、彼は…彼女の亡き骸を抱いたまま、ここで自害したの…
『バンッ❗️』
言い終えた瞬間!外開きの窓が勢いよく開け放たれた。
不思議と恐怖は感じなかった。
誠が窓を締める。
窓からあの寂れた小さな神社が見えた。
「あれは、二人を憐れんだ町民や農民たちが、その亡骸を祀り、建てたものよ」
「そんなことがあったなんて…では…」
「私が見たのは、多分…彼女」
調べるうちに、その掛け軸の写真を見ていた。
「そうかもしれないね。私が君と出逢い、君とこうしてここにいるのも、運命なのかもしれない」
誠の目をみた静華は、彼が何かを決めたことが分かった。
「さて、辛い話をさせてしまったね。でもありがとう静華。大切なものを確かに感じたよ」
そう言って、ベッドへもどる誠。
「…ねえ、まこと」
「なんだい?静華」
「そっち…行っていい…かな?」
誠が優しい微笑む。
「もちろんいいよ。静華と私は結婚してるんだから。おいで」
そう言って布団を広げる。
バスローブを脱いで、誠のベッドへ入る静華。
誠の胸に頬を乗せて寄り添う。
誠の両腕が、そっと静華を抱きしめた。
(あたたかい…)
「しずか」 優しい声。
ゆっくり顔を上げる。
「まこと」
その優しいぬくもりの中で。
そっと唇を重ねた。
その後は何事も起こらず。
二人の協道結婚は、無事に初夜を迎えられたのであった。
曰く付きの物件の中で。
誠が静華の方を向く。
静華は、天井を見つめている。
「その頃、ここの大名はひどい暴君で、お茶がぬるいってだけで、手打ちにしてたとか。吉右衛門は、剣の腕がたち、優しい人柄は、町民や農民からも慕われてたの」
(あれ?) 二人同時の違和感。
夜とはいえ、車や町の音が聞こえていた。
…さっきまでは。
気にしつつも話を続ける。
「彼には許嫁(いいなづけ)がいて、掛け軸に描いて貰ったほど、美しい人だったみたい。でも…ある日、その噂が大名に知れ、二人の仲は無理矢理に引き裂かれたの。」
結末を知る静華の瞳から、涙がこぼれた。
「大名をひたすら拒み続けた彼女は、縛られ、吊るされ、ひどい拷問まで受けたの。でも愛する人を信じて、必死で生きてた」
言葉が詰まる。
「大丈夫かい」
誠が静華のベッドに腰かけ、優しく気遣う。
流れる涙を脱いだバスローブの袖で拭う。
「ある夜、彼は大名屋敷に忍び込み、寝ている大名を暗殺。食事も与えられず、吊るされていたぼろぼろの彼女を救い出したの」
涙が溢れ出す。
「彼の邪魔をする者は誰一人いなくて、大名は病死とされたんだって」
なるほど…と誠は納得した。
「でもね……遅かったの。」
静華が奥歯を噛み締めるのがわかった。
「助け出した時は、もう虫の息で…ただ一度だけ、たった一度だけ、腫れあがった瞼を開いて彼の目を見たの。そして、最後の力で微笑んで…」
暫くの間、声が出せなかった。
「その夜ね、彼は…彼女の亡き骸を抱いたまま、ここで自害したの…
『バンッ❗️』
言い終えた瞬間!外開きの窓が勢いよく開け放たれた。
不思議と恐怖は感じなかった。
誠が窓を締める。
窓からあの寂れた小さな神社が見えた。
「あれは、二人を憐れんだ町民や農民たちが、その亡骸を祀り、建てたものよ」
「そんなことがあったなんて…では…」
「私が見たのは、多分…彼女」
調べるうちに、その掛け軸の写真を見ていた。
「そうかもしれないね。私が君と出逢い、君とこうしてここにいるのも、運命なのかもしれない」
誠の目をみた静華は、彼が何かを決めたことが分かった。
「さて、辛い話をさせてしまったね。でもありがとう静華。大切なものを確かに感じたよ」
そう言って、ベッドへもどる誠。
「…ねえ、まこと」
「なんだい?静華」
「そっち…行っていい…かな?」
誠が優しい微笑む。
「もちろんいいよ。静華と私は結婚してるんだから。おいで」
そう言って布団を広げる。
バスローブを脱いで、誠のベッドへ入る静華。
誠の胸に頬を乗せて寄り添う。
誠の両腕が、そっと静華を抱きしめた。
(あたたかい…)
「しずか」 優しい声。
ゆっくり顔を上げる。
「まこと」
その優しいぬくもりの中で。
そっと唇を重ねた。
その後は何事も起こらず。
二人の協道結婚は、無事に初夜を迎えられたのであった。
曰く付きの物件の中で。