チョコにありったけの祈りを込めて
「だけどこんなチョコを俺以外の男にも配るのは、正直ムカつく」

「……え？」


　私が一番最初に渡したときに“友チョコ”だと言ったから、毎年ほかの人にも配っているのだと爽来はずっと勘違いしてきたようだ。


「そんなわけないでしょ」


　こんな手の込んだ、本気を注入したチョコを、なんでもない人たちにはバラまかないのに。


「渡すのは爽来にだけ。それ、友チョコでも義理チョコでもないよ」


　思いを込めてていねいに作ったチョコを渡すことで、いつか私の気持ちが伝わると今までずっと信じていた。

　だけどやはり言葉にしないとダメなのだ。
　こんなに大きく育ってしまった気持ちを、もう隠せてはおけないのだし。


「正確に言えば、一番最初に渡したときから友チョコじゃなかった。爽来がすごくモテてたから嘘ついちゃったの。取り繕って咄嗟に出た嘘だったけど、それがこんなに長い年月“足枷(あしかせ)”になるとは思いもしなかった。自分の本当の気持ちを言えなくなるなんて」



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