チョコにありったけの祈りを込めて
「困らせてごめん。はっきり振ってくれていいよ。そのほうが諦めがつくから。そのチョコも気持ち悪いなら持って帰るし」


 さっき渡したばかりのチョコの箱に手を伸ばしたら、すかさず爽来に手首を掴まれた。


「気持ち悪くなんてない」

「だって……」

「これは俺がもらったから、もう俺のものだ。返さない」


 早口で言葉を羅列したあと、爽来はチョコをひとつつまんで口の中へ放り込んだ。


「うまいな。これが本命チョコだったらもっとうまいんだろうなって、毎年思ってた俺のほうがバカだろ。よく考えたら、今までもらったどのチョコも、衣咲の気持ちがちゃんと詰まっていたのに。友チョコだよって嘘を鵜呑みにしてた」


 爽来の言葉は、まるでこの六年の思い出をたどっているようだった。

 隠し続けていた気持ちをすべてさらけだした私は、丸裸にされたみたいで恥ずかしくて。自然と顔を赤くするしかない。


「衣咲、ありがとう」


 にっこりと綺麗な顔で笑う爽来に対し、私は苦笑いの笑みをたたえた。

 ありがとう……か。

 私は爽来がどうしても好きで、諦めがつかなくて、一大決心して告白しに来たというのに。
 爽来の反応があまりにもあっけなさすぎたし、想像していた感じとも違うしで、心の中になにか残ったままになってしまってスッキリしない。
 どうせならきちんと振ってくれたほうが、こんな気持ちにならずに済むのに。

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