チョコにありったけの祈りを込めて
「料理は適当に頼むけどいいよな?」

「うん。あ、でもここのオムソバはおいしいから、それは頼んでほしい」

「はいはい。衣咲(いさき)はそう言うと思った」


 爽来が笑うのを目にし、子どもっぽい発言だっただろうかと後悔したものの、後の祭りだ。
 私は二十四歳になった今も、幼さが抜けていない自覚はある。

 寒さに弱いのもあって、なんだか猫みたいだと例えられることも多い。
 性格的には気まぐれだとか、懐かないことはないのだけれど。

 注文した飲み物が先に届いて、ふたりでグラスを合わせて乾杯をした。
 爽来がゴクゴクとビールをおあり、「うまい」とつぶやく。


 爽来とは高校が一緒で、三年のときは同じクラスだった。
 通っていた塾も同じだったことから、だんだん会話するようになり、偶然大学も一緒になって仲良くなったのだ。

 知り合ってからもう、六年が過ぎた。

 一昨年の春、互いに社会人になり、さすがに会う頻度が激的に減った。
 特に会う理由がないのだから、それは至極当然な流れだ。

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