チョコにありったけの祈りを込めて
「去年はブラウニーだったよな。一昨年は生チョコだった」

「よく覚えてるね」


 差し出された爽来の掌に、手作りチョコを入れた箱を手渡せば、彼がパッと花が咲いたような笑顔になった。


「食べるのがほんとに毎年楽しみなんだよ。衣咲、だんだん腕を上げてるから。素人とは思えないくらいめちゃくちゃ上手になってる」


 それは毎年気合いを入れて作っている努力の結果だ、とは言えない。
 たくさん友チョコを作ったうちのひとつだと、ずっと言い張っていたのだから。

 思い返せばこの六年で、いろんなチョコを作って爽来に渡した。ガトーショコラとかチョコマフィンなんかも。
 前年とは違うものを贈りたくて、あまり売っていないチョコの素材を選んだりもした。
 
 たったひとり、――― すべては爽来のために。


「いっそプロになればよかったのに。なんだっけ、ほら、パティシエじゃなくてチョコレートの職人……」

「ショコラティエ?」

「そう、それ!」

「簡単にはなれないよ」

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