チョコにありったけの祈りを込めて
 資格もそうだけれど、みんな専門学校に通って真剣に実技を身につける。
 生半可な気持ちで入る世界ではない。

 それにだいたい、爽来は勘違いをしている。
 私は特にチョコ作りが好きなわけでも、万人に食べてほしいわけでもないのに。

 わかっていないなぁ、と心の中で嘆きつつ、ウーロンハイのグラスの氷を指でもてあそんだ。


「爽来はチョコ好きだよね。今年もいっぱいもらったの?」

「いや、誰からももらってない」

「え……そうなんだ」


 爽来の返事に私は驚いて、一瞬言葉を詰まらせた。
 モテ男の爽来がひとつもチョコを渡されないなんて考えられない。


「うちの会社、義理チョコ渡すのは辞めてるしな」

「だとしても、爽来を本気で好きな女性はいそうだけど」

「気になるのか?」


 そりゃ気になるでしょ。爽来のことならなんでも。
 だけど私は誤魔化すように、首をかしげて曖昧に笑った。

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