チョコにありったけの祈りを込めて
「チョコ、見てもいい?」

「見るだけね。先に言うけど……今年のは爽来をビックリさせるかも」

「ん? そんなに変わり種のチョコ?」


 飲食店にいるのだから、持ち込んだ物を食べるのはダメだ。

 そんなことより、ニコニコとしながらラッピングのリボンを解いて箱を開けようとする爽来を目の前にして、私は緊張からか指先が震えてきた。


「ナッツ入りのローチョコレートなの」


 今年は難しいレシピのものにあえてチャレンジしたとか、説明したいことはいろいろとあるけれど。
 それはもう、正直どうでもいい。

 中身を見た爽来の表情の変化が気になって、私はずっと彼の顔を見ていた。


「……今年のは……たしかにこれまでと違うから、ビックリしたといえばしたかな。でも、上手だよ」


 爽来は笑みをたたえているものの、明らかに戸惑いの感情が混じっている。
 こうなるのは私の中で想定内だ。
 
 だって、今年のチョコは全部ハート型にしたから。

 今まではこんなふうに、チョコの形で自分の気持ちを表したことは一度もなかった。

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