sweets 〜 焼き菓子が結ぶ恋物語 〜
「二葉、今日の注文は何だ?」
服を着ながら友哉さんが聞いてきた。
「今日はチーズケーキ」
「どんな?」
「ベイクドチーズケーキ2台」
「ふーん、二葉がケーキなんて珍しいな」
「ケーキは・・・チーズケーキとウィークエンドシトロンくらい」
「じゃあ・・・今日の注文は俺が作る」
「ほんと? いいの?」
「ああ、いいよ」
優しい・・・。
「どうした、ボーッとして」
「優しくて・・・困る」
「変なヤツだなー」
私の前髪をクシャっと崩して笑った。
「俺も、二葉が可愛くて困る」
え? えー? えーーー!!
「ほら、もう出掛けるぞ」
「ね、今の・・・」
「絶対言わない」
私たちが向かったのは、二度目に会った通り沿いの新築店舗だった。
「ここって・・・」
「俺がいるパリの店、東京に店舗を出すから進み具合を見て来てほしいって社長に頼まれて。それで日本に帰って来たんだ」
「・・・それだけ?」
「ん?」
「そのためだけ?」
「・・・その手には乗らない」
バレたか。ふふ。
「油断すると、いろいろ言わされるからなー」
友哉さん・・・笑顔が増えた。
私も、そんな友哉さんと一緒にいるだけで嬉しくなる。
「ここで作るから」
「え? もう使えるの?」
「こないだ・・・二葉とここで会った日に設備がひと通り搬入されて。試してみたけど問題無さそうだった」
「そうなんだ」
ふたりでいると、まるでここが私たちのお店かと、勘違いしてしまいそうになる。
「あ、材料出すね」
「無理すんなよ」
「うん」
作業台に全ての材料を出して、スケール(量り)やヘラを探そうと後ろを振り返ると、着替えを済ませた友哉さんがいた。
「カッコいい・・・」
「は?」
「コックコート・・・」
「あぁ、服」
「あ、ううん。そうじゃない」
「俺?」
「・・・はい」
頬を赤くしている私に近づいて来て。
「だからさ、無意識に煽るなって」
「そんな・・・」
「今すぐ連れて帰りたくなるだろ?」
チュッ、と軽いキスをされた。
でも、本当にそう思った。
友哉さん、結構長身で肩幅もしっかりあるから、すごく似合う。
布地に張りがあって、切り替え部分の青いラインがとても洗練されている。
「友哉さんのコックコート、フランス製?」
「おそらく。パリで買った」
「素敵なデザインだね」
「向こう行ったら、二葉にも同じもの買ってやるよ」
話をしながらも、ムダの無い動きで次々と材料を扱い、流れるように生地を作っていった。
あっという間にオーブンに入り、ひと息つく。
通りを挟んだカフェでコーヒーを買い、私たちは飲みながら焼き上がりを待った。
「二葉、手は痛くないか?」
「うん、大丈夫」
「そうか」
「・・・私、なんだか助けてもらってばかりだね」
「ん?」
「先週友哉さんに会った日から・・・いつも助けられてる」
「あんまりそう思ってないけどな」
時折オーブンの様子のぞきながら、友哉さんは私の話に相槌を打っていた。
「私は・・・友哉さんにしてあげられること、あるかな」
半分ほどコーヒーの残った紙カップに視線を落としながら、私はつぶやいた。
「二葉」
友哉さんに呼ばれて顔を上げると、やわらかい笑顔がそこにあった。
「二葉はいつも俺に、可愛いって思わせてればいいんじゃないか?」
服を着ながら友哉さんが聞いてきた。
「今日はチーズケーキ」
「どんな?」
「ベイクドチーズケーキ2台」
「ふーん、二葉がケーキなんて珍しいな」
「ケーキは・・・チーズケーキとウィークエンドシトロンくらい」
「じゃあ・・・今日の注文は俺が作る」
「ほんと? いいの?」
「ああ、いいよ」
優しい・・・。
「どうした、ボーッとして」
「優しくて・・・困る」
「変なヤツだなー」
私の前髪をクシャっと崩して笑った。
「俺も、二葉が可愛くて困る」
え? えー? えーーー!!
「ほら、もう出掛けるぞ」
「ね、今の・・・」
「絶対言わない」
私たちが向かったのは、二度目に会った通り沿いの新築店舗だった。
「ここって・・・」
「俺がいるパリの店、東京に店舗を出すから進み具合を見て来てほしいって社長に頼まれて。それで日本に帰って来たんだ」
「・・・それだけ?」
「ん?」
「そのためだけ?」
「・・・その手には乗らない」
バレたか。ふふ。
「油断すると、いろいろ言わされるからなー」
友哉さん・・・笑顔が増えた。
私も、そんな友哉さんと一緒にいるだけで嬉しくなる。
「ここで作るから」
「え? もう使えるの?」
「こないだ・・・二葉とここで会った日に設備がひと通り搬入されて。試してみたけど問題無さそうだった」
「そうなんだ」
ふたりでいると、まるでここが私たちのお店かと、勘違いしてしまいそうになる。
「あ、材料出すね」
「無理すんなよ」
「うん」
作業台に全ての材料を出して、スケール(量り)やヘラを探そうと後ろを振り返ると、着替えを済ませた友哉さんがいた。
「カッコいい・・・」
「は?」
「コックコート・・・」
「あぁ、服」
「あ、ううん。そうじゃない」
「俺?」
「・・・はい」
頬を赤くしている私に近づいて来て。
「だからさ、無意識に煽るなって」
「そんな・・・」
「今すぐ連れて帰りたくなるだろ?」
チュッ、と軽いキスをされた。
でも、本当にそう思った。
友哉さん、結構長身で肩幅もしっかりあるから、すごく似合う。
布地に張りがあって、切り替え部分の青いラインがとても洗練されている。
「友哉さんのコックコート、フランス製?」
「おそらく。パリで買った」
「素敵なデザインだね」
「向こう行ったら、二葉にも同じもの買ってやるよ」
話をしながらも、ムダの無い動きで次々と材料を扱い、流れるように生地を作っていった。
あっという間にオーブンに入り、ひと息つく。
通りを挟んだカフェでコーヒーを買い、私たちは飲みながら焼き上がりを待った。
「二葉、手は痛くないか?」
「うん、大丈夫」
「そうか」
「・・・私、なんだか助けてもらってばかりだね」
「ん?」
「先週友哉さんに会った日から・・・いつも助けられてる」
「あんまりそう思ってないけどな」
時折オーブンの様子のぞきながら、友哉さんは私の話に相槌を打っていた。
「私は・・・友哉さんにしてあげられること、あるかな」
半分ほどコーヒーの残った紙カップに視線を落としながら、私はつぶやいた。
「二葉」
友哉さんに呼ばれて顔を上げると、やわらかい笑顔がそこにあった。
「二葉はいつも俺に、可愛いって思わせてればいいんじゃないか?」