sweets 〜 焼き菓子が結ぶ恋物語 〜
パリ シャルル・ド・ゴール発の飛行機が羽田に到着したと、少し前にアナウンスがあった。
「あぁ、二葉、どうしよう。どんな顔でお父さんに会えばいい?」
落ち着かない母は、今にも泣き出しそうだ。
とはいえ、私だって父に会うのは30年ぶりなのだ・・・。
「社長!!」
友哉さんが、到着口から出てきた男性に声を掛ける。
その男性は、友哉さんの横にいる車椅子の母を確認し、一瞬立ち止まった。
「真理子!」
そう言って、足早に母に駆け寄った。
「征一郎さん・・・」
すぐそばまで来た父に、母が車椅子から身を乗り出して抱きつく。
「真理子。真理子、会いたかった・・・」
「征一郎さん、私、すっかりおばあちゃんになってしまって。車椅子だし、立ち上がって抱きつくこともできなくて・・・」
「いいんだ。ずっとひとりにして、すまなかった。本当に、すまない・・・」
「征一郎さん・・・」
娘の私が見ても、ふたりの再会は感動的だった。
友哉さんに肩を抱かれながら、もう涙が止まらない。
「社長」
母と抱き合う父が、友哉さんの呼び掛けに顔を上げた。
「二葉です」
父が、不思議そうな顔をした。
どうして、友哉さんが私の肩を抱いているのか?とでも、言わんばかりに。
「征一郎さん。友哉さんは二葉の彼なのよ」
「ええっ!」
母の言葉に、父が驚いている。
「友哉くん、そんなこと一度も・・・ずっとパリにいたのにどうやって? いや、でも、真理子と二葉を見つけてくれたのは友哉くんだし・・・」
「みんな、いろいろあるのよ」
そう言って、母は微笑んだ。
「社長、ひとまず移動しませんか? ずっとここにいるのも・・・」
「そうだな」
「荷物、持ちますよ」
友哉さんは、父のキャリーケースを持って駐車場に向かった。
母の車椅子は、いつの間にか父が押していた。
「征一郎さん、二葉に押してもらうからいいのに」
「そう言うな。俺が押してもいいだろう?」
4人で、父の店に向かった。
「俺が東京に店を出そうと思ったのは、もしかしたら、真理子や二葉が気付いてくれるんじゃないか・・・なんて淡い期待もあったんだ。それなのに、まさかこんなに早く会えるなんて・・・」
驚きを隠せない父に、友哉さんが店の奥からシトロンを持ってきた。
「友哉くん、これは?」
「ここで働きたいっていうパティシエがいて、テスト代わりに持ってきたんですよ」
「え?」
父が、フォークでひと口分を切り分け、口に入れる。
「これは・・・」
「征一郎さん?」
「真理子も、ひと口食べてみなさい」
父に言われ、母もフォークでひと口食べる。
「え? 征一郎さんのケーキと同じ味が・・・どうして?」
驚くふたりに、友哉さんが告げる。
「これは、二葉が作ったんです」
私も、コクリとうなずく。
「真理子、もしかして二葉は・・・」
「そうよ。あのノートは、二葉がずっと大事にしているの。征一郎さんと同じ道に進んだのよ」
父の視線が、改めて私の方に向く。
「俺を、恨んでないのか?」
そう言った父に、私は伝えた。
「もし恨んでいたら、同じ道には進まなかっただろうし、同じ職業の人を、一生の相手にすることは無かったと思うよ」
父は、手で目を覆って静かに泣いていた。
「あぁ、二葉、どうしよう。どんな顔でお父さんに会えばいい?」
落ち着かない母は、今にも泣き出しそうだ。
とはいえ、私だって父に会うのは30年ぶりなのだ・・・。
「社長!!」
友哉さんが、到着口から出てきた男性に声を掛ける。
その男性は、友哉さんの横にいる車椅子の母を確認し、一瞬立ち止まった。
「真理子!」
そう言って、足早に母に駆け寄った。
「征一郎さん・・・」
すぐそばまで来た父に、母が車椅子から身を乗り出して抱きつく。
「真理子。真理子、会いたかった・・・」
「征一郎さん、私、すっかりおばあちゃんになってしまって。車椅子だし、立ち上がって抱きつくこともできなくて・・・」
「いいんだ。ずっとひとりにして、すまなかった。本当に、すまない・・・」
「征一郎さん・・・」
娘の私が見ても、ふたりの再会は感動的だった。
友哉さんに肩を抱かれながら、もう涙が止まらない。
「社長」
母と抱き合う父が、友哉さんの呼び掛けに顔を上げた。
「二葉です」
父が、不思議そうな顔をした。
どうして、友哉さんが私の肩を抱いているのか?とでも、言わんばかりに。
「征一郎さん。友哉さんは二葉の彼なのよ」
「ええっ!」
母の言葉に、父が驚いている。
「友哉くん、そんなこと一度も・・・ずっとパリにいたのにどうやって? いや、でも、真理子と二葉を見つけてくれたのは友哉くんだし・・・」
「みんな、いろいろあるのよ」
そう言って、母は微笑んだ。
「社長、ひとまず移動しませんか? ずっとここにいるのも・・・」
「そうだな」
「荷物、持ちますよ」
友哉さんは、父のキャリーケースを持って駐車場に向かった。
母の車椅子は、いつの間にか父が押していた。
「征一郎さん、二葉に押してもらうからいいのに」
「そう言うな。俺が押してもいいだろう?」
4人で、父の店に向かった。
「俺が東京に店を出そうと思ったのは、もしかしたら、真理子や二葉が気付いてくれるんじゃないか・・・なんて淡い期待もあったんだ。それなのに、まさかこんなに早く会えるなんて・・・」
驚きを隠せない父に、友哉さんが店の奥からシトロンを持ってきた。
「友哉くん、これは?」
「ここで働きたいっていうパティシエがいて、テスト代わりに持ってきたんですよ」
「え?」
父が、フォークでひと口分を切り分け、口に入れる。
「これは・・・」
「征一郎さん?」
「真理子も、ひと口食べてみなさい」
父に言われ、母もフォークでひと口食べる。
「え? 征一郎さんのケーキと同じ味が・・・どうして?」
驚くふたりに、友哉さんが告げる。
「これは、二葉が作ったんです」
私も、コクリとうなずく。
「真理子、もしかして二葉は・・・」
「そうよ。あのノートは、二葉がずっと大事にしているの。征一郎さんと同じ道に進んだのよ」
父の視線が、改めて私の方に向く。
「俺を、恨んでないのか?」
そう言った父に、私は伝えた。
「もし恨んでいたら、同じ道には進まなかっただろうし、同じ職業の人を、一生の相手にすることは無かったと思うよ」
父は、手で目を覆って静かに泣いていた。