sweets 〜 焼き菓子が結ぶ恋物語 〜
「つまり・・・いや、一体どうなってるんだ?」
友哉さんのお父さんが困惑している。
それもそうだ。
みんなで、一斉に安斉家に押し掛けたのだから。
友哉さんと私、父と母、そして所長さんと友哉さんのお兄さんの紘基(こうき)さん。
「えーと、まずは、友哉が結婚したいと思っている娘さんが、星崎と真理子さんのお嬢さんか?」
「その通りだ。娘の二葉をよろしく頼む」
父が答える。
よろしく・・・って、昨日30年ぶりに再会したばかりなのに、もうすっかり『父親』している。
友哉さんと私は、思わず苦笑した。
「で、星崎は真理子さんをパリに連れて行くと」
「ええっ、お父さんそうなの!?」
昨日はそんなことひと言も・・・。
「そうだ。これからは、真理子と一緒にパリで暮らすんだ」
「でも病気の治療は・・・」
「なんだ二葉、パリにだって医者はいる。俺が連れて行くから大丈夫だ」
あれ? どこかできいたセリフだ。
友哉さんが私の横で、ククッと笑っている。
「パリに渡った頃はまだ若くて、時間にもカネにも余裕は無いし、フランス語もできなかった。30年たって、今ならな」
「征一郎さんが、『ようやく迎えに来れた』って言ってくれたの。二葉には友哉さんがいるし、もう自分の心配だけすればいいかなって」
母の笑顔から、嬉しさが伝わってくる。
「お父さん、友哉さんは? これからもパリのお店に?」
そう尋ねた私に、今度は友哉さんのお父さんが答える。
「二葉さん。友哉は日本に帰ってくるんだ」
「え?」
「二葉さんと、東京で星崎の店をやるんだそうだ」
「ええっ!?」
友哉さんが、私の右手をぎゅっと握った。
「俺が、社長と親父に頼んだ。二葉といさせてほしいって。一緒にこれから出す店をやりたいって」
「二葉、昨日も話したと思うが、あの店は真理子や二葉に俺の存在を気付いてもらおうとして計画した店だ。でも、もう見つかっただろう?」
「はい」
「その上、俺と同じ道を歩いている娘と、俺が腕も人柄も信頼している友哉くんが一緒にやってくれるなら、こんなに嬉しいことはないからな」
「お父さん・・・」
「安斉も出資すると言ってくれてな。まぁ、あの店は友哉くんと二葉への結婚祝いだ」
最後に、友哉さんのお父さんが、所長さんに声を掛けた。
「今日子、おまえはどうする?」
「え? どうする・・・って」
「もし・・・もし良ければ、戻ってこないか?」
「・・・」
「籍をどうこうとか、そんなことはどうでもいい。会社の経営は、これを機に紘基に任せることにしたんだ。残りの時間は、のんびり一緒に過ごしたい」
「あなた・・・」
「おまえの職場にお菓子を届ける役目は、二葉さんから俺に交代だ」
「何よ、もう全部決まってるんじゃないの・・・」
そう言って言葉を詰まらせる所長さん・・・友哉さんのお母さんに、私はそっとハンカチを渡した。
「さぁ、みんなでお茶にしましょう」
キッチンにいた紘基さんの奥さまの美紀さんが、明るく声を掛ける。
「そうだな。二葉さんのシトロン、土産に持ってきたんだろう? 楽しみだ」
「親父、二葉を緊張させるなよ」
恐縮して肩をすくめる私に、友哉さんのお父さんが言った。
「俺は、自分の従業員が作ったものは全て口にしてるからな。今回が初めてじゃない」
友哉さんのお父さんが困惑している。
それもそうだ。
みんなで、一斉に安斉家に押し掛けたのだから。
友哉さんと私、父と母、そして所長さんと友哉さんのお兄さんの紘基(こうき)さん。
「えーと、まずは、友哉が結婚したいと思っている娘さんが、星崎と真理子さんのお嬢さんか?」
「その通りだ。娘の二葉をよろしく頼む」
父が答える。
よろしく・・・って、昨日30年ぶりに再会したばかりなのに、もうすっかり『父親』している。
友哉さんと私は、思わず苦笑した。
「で、星崎は真理子さんをパリに連れて行くと」
「ええっ、お父さんそうなの!?」
昨日はそんなことひと言も・・・。
「そうだ。これからは、真理子と一緒にパリで暮らすんだ」
「でも病気の治療は・・・」
「なんだ二葉、パリにだって医者はいる。俺が連れて行くから大丈夫だ」
あれ? どこかできいたセリフだ。
友哉さんが私の横で、ククッと笑っている。
「パリに渡った頃はまだ若くて、時間にもカネにも余裕は無いし、フランス語もできなかった。30年たって、今ならな」
「征一郎さんが、『ようやく迎えに来れた』って言ってくれたの。二葉には友哉さんがいるし、もう自分の心配だけすればいいかなって」
母の笑顔から、嬉しさが伝わってくる。
「お父さん、友哉さんは? これからもパリのお店に?」
そう尋ねた私に、今度は友哉さんのお父さんが答える。
「二葉さん。友哉は日本に帰ってくるんだ」
「え?」
「二葉さんと、東京で星崎の店をやるんだそうだ」
「ええっ!?」
友哉さんが、私の右手をぎゅっと握った。
「俺が、社長と親父に頼んだ。二葉といさせてほしいって。一緒にこれから出す店をやりたいって」
「二葉、昨日も話したと思うが、あの店は真理子や二葉に俺の存在を気付いてもらおうとして計画した店だ。でも、もう見つかっただろう?」
「はい」
「その上、俺と同じ道を歩いている娘と、俺が腕も人柄も信頼している友哉くんが一緒にやってくれるなら、こんなに嬉しいことはないからな」
「お父さん・・・」
「安斉も出資すると言ってくれてな。まぁ、あの店は友哉くんと二葉への結婚祝いだ」
最後に、友哉さんのお父さんが、所長さんに声を掛けた。
「今日子、おまえはどうする?」
「え? どうする・・・って」
「もし・・・もし良ければ、戻ってこないか?」
「・・・」
「籍をどうこうとか、そんなことはどうでもいい。会社の経営は、これを機に紘基に任せることにしたんだ。残りの時間は、のんびり一緒に過ごしたい」
「あなた・・・」
「おまえの職場にお菓子を届ける役目は、二葉さんから俺に交代だ」
「何よ、もう全部決まってるんじゃないの・・・」
そう言って言葉を詰まらせる所長さん・・・友哉さんのお母さんに、私はそっとハンカチを渡した。
「さぁ、みんなでお茶にしましょう」
キッチンにいた紘基さんの奥さまの美紀さんが、明るく声を掛ける。
「そうだな。二葉さんのシトロン、土産に持ってきたんだろう? 楽しみだ」
「親父、二葉を緊張させるなよ」
恐縮して肩をすくめる私に、友哉さんのお父さんが言った。
「俺は、自分の従業員が作ったものは全て口にしてるからな。今回が初めてじゃない」