sweets 〜 焼き菓子が結ぶ恋物語 〜
お昼に後ろから抱きしめられた時は、抱きしめられたことよりも、
『またあの時みたいに、ひとりで全部背負う気か!』
そう言われたことに驚くばかりだった。
だけど・・・。
今は明らかに心臓の鼓動が早くて、そして、私を包む友哉さんの鼓動も早くなっていることに気付いて、だんだん頬が熱くなってきた。
もしかして・・・同じ気持ち?
そんなことを考えていたら、友哉さんも私の頬の熱さに気付いたらしい。
「火傷した上に、熱まで出たら困るな。もう車に・・・」
そう言って私を離そうとした友哉さんの背中に、私は両手を回した。
「二葉?」
「もう少しだけ・・・このままじゃダメかな」
同じ気持ちでいてくれたらと、友哉さんの反応を待った。
「じゃあ・・・あと3分だけな」
一度離れた腕が、もう一度私を包んだ。
ずっとこのままでいたいと思うくらい暖かくて、涙が出そうになった。
「ほら、そろそろ車に入らないと本当に風邪ひくぞ」
助手席のドアを開け、私を強引に押し込んだ。
運転席から車に乗った友哉さんは、助手席の私を見て、左手を私の頬に当てた。
「まだ顔が赤いぞ、大丈夫か?」
「・・・」
友哉さんの手が私の頬で止まったまま、ふたりの視線が重なる。
当然、私は次の展開を予想したし、それを望んだ。
誰かを好きになるのなんて、あっという間だ。長い時間も、長い理由も必要無い・・・。
友哉さんの右手も、私の頬に触れた。
「熱いな」
「もしかしたら・・・本当に熱がある」
友哉さんの唇が、私の言葉を遮った。
外の風で少し冷たくなった唇が重なる。
一度・・・二度・・・。
回数が重なると、さらにその先を想像して、ますます鼓動が早くなった。
その時、唇を重ねたまま、フッと友哉さんが笑った気がした。
「友哉・・・さん?」
「・・・これ以上したら、止められないな」
そう言って唇を離し、手も頬から離れた。
「ごめんな、二葉」
「え?」
『ごめん』の意味が分からず、困惑した。
いま、キスしたこと?
キスの先を、止めたこと?
それとも・・・
「友哉さん、ごめん・・・の意味が」
分からない、と言おうとした時、友哉さんが私を引き寄せて、さっきよりも強く抱き締められた。
「あの時もこうやって抱き締めるつもりだったのに、何が起こったか分かった時には、もういなくなっていて・・・」
耳のそばで、少しくぐもった声が聞こえる。
「二葉を、俺がいるパリに連れて行こうと思ってたんだ」
「え?」
予想もしなかった言葉に、思わず顔を上げる。
「それって・・・」
どういうことなのかちゃんと聞きたくて、私は、友哉さんの腕から逃れた。
「俺は、安斉(あんざい) 友哉。パティスリーANZAIの社長の息子だ」
パティスリーANZAI・・・。
2年前、私が逃げるようにして辞めたお店。
熱かった頬が急激に冷えて、逆に青ざめていくのが自分でも分かった。
「ということは、所長さんは・・・」
「まぁ、あのふたりは去年離婚したから、元社長夫人てヤツだ」
ふたりとも、全部知ってたんだ。
知ってて何も言わずに・・・。
「俺が母さんに頼んだんだ。二葉を探し出して、助けてやってほしい・・・って」
『またあの時みたいに、ひとりで全部背負う気か!』
そう言われたことに驚くばかりだった。
だけど・・・。
今は明らかに心臓の鼓動が早くて、そして、私を包む友哉さんの鼓動も早くなっていることに気付いて、だんだん頬が熱くなってきた。
もしかして・・・同じ気持ち?
そんなことを考えていたら、友哉さんも私の頬の熱さに気付いたらしい。
「火傷した上に、熱まで出たら困るな。もう車に・・・」
そう言って私を離そうとした友哉さんの背中に、私は両手を回した。
「二葉?」
「もう少しだけ・・・このままじゃダメかな」
同じ気持ちでいてくれたらと、友哉さんの反応を待った。
「じゃあ・・・あと3分だけな」
一度離れた腕が、もう一度私を包んだ。
ずっとこのままでいたいと思うくらい暖かくて、涙が出そうになった。
「ほら、そろそろ車に入らないと本当に風邪ひくぞ」
助手席のドアを開け、私を強引に押し込んだ。
運転席から車に乗った友哉さんは、助手席の私を見て、左手を私の頬に当てた。
「まだ顔が赤いぞ、大丈夫か?」
「・・・」
友哉さんの手が私の頬で止まったまま、ふたりの視線が重なる。
当然、私は次の展開を予想したし、それを望んだ。
誰かを好きになるのなんて、あっという間だ。長い時間も、長い理由も必要無い・・・。
友哉さんの右手も、私の頬に触れた。
「熱いな」
「もしかしたら・・・本当に熱がある」
友哉さんの唇が、私の言葉を遮った。
外の風で少し冷たくなった唇が重なる。
一度・・・二度・・・。
回数が重なると、さらにその先を想像して、ますます鼓動が早くなった。
その時、唇を重ねたまま、フッと友哉さんが笑った気がした。
「友哉・・・さん?」
「・・・これ以上したら、止められないな」
そう言って唇を離し、手も頬から離れた。
「ごめんな、二葉」
「え?」
『ごめん』の意味が分からず、困惑した。
いま、キスしたこと?
キスの先を、止めたこと?
それとも・・・
「友哉さん、ごめん・・・の意味が」
分からない、と言おうとした時、友哉さんが私を引き寄せて、さっきよりも強く抱き締められた。
「あの時もこうやって抱き締めるつもりだったのに、何が起こったか分かった時には、もういなくなっていて・・・」
耳のそばで、少しくぐもった声が聞こえる。
「二葉を、俺がいるパリに連れて行こうと思ってたんだ」
「え?」
予想もしなかった言葉に、思わず顔を上げる。
「それって・・・」
どういうことなのかちゃんと聞きたくて、私は、友哉さんの腕から逃れた。
「俺は、安斉(あんざい) 友哉。パティスリーANZAIの社長の息子だ」
パティスリーANZAI・・・。
2年前、私が逃げるようにして辞めたお店。
熱かった頬が急激に冷えて、逆に青ざめていくのが自分でも分かった。
「ということは、所長さんは・・・」
「まぁ、あのふたりは去年離婚したから、元社長夫人てヤツだ」
ふたりとも、全部知ってたんだ。
知ってて何も言わずに・・・。
「俺が母さんに頼んだんだ。二葉を探し出して、助けてやってほしい・・・って」