Mazzo d'amore
「な、なんだと!?」

「母さん相変わらず、すごっ」

最近入ってきた事務員さんも驚いた表情をしていた。

私は鞄をおろし事務所の空いている机の上に持ち帰った宿題を出してやり始めた。

「くそ!ここのアジトはもうダメか。せめてお前達だけでも……無事で居てくれ!俺は……玉砕覚悟で奴らを葬ってくる!」

「大丈夫!守るべき人が居る奴の強さ見せてやりな!あんたの好きなコロッケ準備して待ってるからね」

「ああ!必ず無事に帰ってくるからな!じゃあ!」

そう言って父は出かけていった。

「お父さんどこ行ったの?」

「トイレの電球買いに行ったの」

「ふーん」

私達のやり取りに事務員さんが吹いていた。

「ねえねえ、私お花買いたいからお金ちょうだい」

「何のお花?」

「え…えっとその…」

しどろもどろし、答えれないで居ると

「あんた次はお花屋か」

鋭い母の視線が突き刺さった。

私は前回のお弁当屋さんに一目惚れした時は弁当を買いに毎日通った。

毎日買うけれど体重を気にして食べれない私はそのお弁当を従業員の方達に渡していた。

本屋さんの時は本を買い。

ケーキ屋さんの時はケーキを買い。

必要以上に買い増える一つの物。

その為、母は良い顔しなかった。

「ち、違う!おばあちゃんに花を届けたいの!」

「ああ、そうなのね」

さっきと打って変わり普通の顔に戻った母の表情に良かった通じたと安心した。

「でもまあ、お金欲しいなら手伝ってね」

「え!また!?」

「ウチは必要ない物は対価交換でしょ」

ギラリと鋭い眼光が私を睨む。

どうやら母には通じてなかったようだ。

我が家は母が必要と判断する物はお金をくれるがそうでない物が欲しい時は労働させられる。

一般家庭だとお風呂掃除や食器洗いなどがあるかと思うがウチの仕事は建築関係。

ガチ目な仕事をやらされる。

手伝いと呼べるレベルではなく労働させられる。
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