Mazzo d'amore
「料理のさしすせそ?」

「違う、違う、まあお客さん来たら見ときなって」

そう言ってお店は開店時間となり、開店時間から20分過ぎた所で本日初めてのお客様(男性1名50代)が来店した。

「いらっしゃいませ、こちらの席へどうぞ」

翔子さんは接客を始めた。

カウンターへ案内し、おしぼりを渡しドリンクの注文を受けた。

「こちら生ビールです」

「ありがとう!いやぁ、今日仕事忙しかったんだけどなんとか切り抜けたわ」

おしぼりで手や顔を拭きながらにこやかに話すおじさまに翔子さんはニコリと言い返した。

「サすがですね」

「そういや、ふるさと納税って知ってる?」

「シらない知らない!それ良いんですか?」

「翌年の税金が控除される制度なんだよ」

「スごーい!良くわかんないけど良いんですね」

「色々特産品を選べれるんだけど国産高級ブランド肉にしたんだ」

「センスありますね!食べたら感想聞かせてくださいね」

「もう1月には届いたよ。食べるのは俺じゃなくて普段中々親孝行出来てないから親にあげたんだけどね」

「ソんけい!じゃあ今度私にも食べさせてくださいね」

そんな会話をお客様と繰り広げていた。

沢山褒められて上機嫌になったおじさまに翔子さんもドリンクをご馳走になっていた。

(いや、普通にお客さん良い人なんだが!)

「お客さんはね女の子と話をしたいんじゃないの。女の子に話しがしたくて来てるの」

「まあ中には私達の話しを聞きに来たい人もいるけどそんな人は滅多に居ないからこっちは相手に気分良く喋らせて酒飲ませとけば良いのよ」

そんな母と翔子さん2人が淡々と喋り怖く思えた。
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