Mazzo d'amore
「ほら、お客さん来たから接客してみな」

扉から2名の40代ぐらいの男性2人が入ってきた。

「ええ!無理無理!」

「いつかはやらないといけないんだから経験よ経験」

「おしぼり出してあげて」

「あぁもう!わかったわよ!」

(ええと、ええと、さしすせそ)

さすが
知らなかった
すごい
センス
そんけい又はそうなんですね

私は何度も頭の中で繰り返しはじめての接客に挑んだ。

カウンターに腰掛けた40代に見える男性2人に声をかけた。

「いいいいらっしゃいませ、おしぼりですっ!」

ガチガチに緊張してる私に男性客2人は笑った。

「なに?緊張してるの?」

「今日から?」

そんな男性達からの問いに私は元気良く答えた。

「さすがですねっ!!」

「は?」

「え?」

きょとんとする男性2人を見てやってしまったと思った。

相手の声をまともに聞かずに反応してしまった。

私は緊張すると相手の声や言葉の内容を聞かないまま見当違いな言葉を出してしまう事が昔からある。

思い返せば3歳のこの頃からだった。

幼い頃の1年ってやっぱり体格差が凄いあって私の家の近所に住む菜音(なおと)くんとは同じ歳ながらにも私の方が大きかった。

私は4月2日生まれで菜音くんは3月31日生まれ。

同じ学年なのに私より363日も歳が下になる。

私と菜音君の同じ歳は一年を通してたったの1日しかないのだ。

なので女の子の私の方が菜音くんよりも体が大きく弟のように扱い引っ張っていた。
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