Mazzo d'amore
「心春どこ行ってたの?何してたの?教えて?」

「ママもパパも心配したんだぞ!」

母と父に詰められた。

どうせ家に帰れば親に絶対聞かれるだろうなと思ってた。

普段こんなに遅くまで外で遊ぶ事はないので薄暗くなってた時点で私は覚悟していた。

頭の中では母から聞かれる質問をシチュエーションし答えを用意していた。

『お手紙出す練習しにおばあちゃん家に行こうとしたの』

『四つ葉のクローバーを探してたの』

『帰り道、菜音くんが途中でこけて泣いて大変だったの』

しかし、いざ聞かれるとテンパった私は質問と見当違いの答えを出した。

「何が出るかな!何が出るかな!クリームソーダ!略してクソ!」

パニックになり出した答えがクソだった。

「あんたのせいで子供が真似したじゃねぇか!」

母にしばかれる父を見て私は幼きながらに申し訳なさを感じた。

「あはは面白いエピソードあるんだね心春ちゃん」

私が幼少期のエピソードを話したら40代の男性2人のお客様は笑ってくれた。

「恥ずかしくて忘れたいエピソードでもあるんですけどね」

「いやいや子供っぽくて可愛いよ」

「ちなみにその菜音くんは今何してるの?」

「今は何してるかわからないです」

菜音くんは小学5年生の夏休みの間に転校して会わなくなってしまった。

「初めての勤務にしてはよくやったね」

深夜お店を閉める頃、母に褒められた。

初めて働いた夜に大きなあくびをし、家に帰りぐっすり眠った。
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