Mazzo d'amore
小学4年生になる年の4月1日のお昼過ぎ。

「心春、今、手空いてるでしょ?これ、菜音くん家に持って行ってあげて。お裾分けですって言って」

母に渡されたのはスーパーのビニール袋いっぱいに入った絹さやえんどう。

「わぁ!すごーい!いっぱいありがとう!」

菜音くんのお母さんは喜んでくれた。

菜音くんのお母さんはいつもニコニコで優しくて可愛い。

あまりの可愛さにこっちが癒される。

小学生ながらに菜音くんのお母さんは今もきっとモテるんだろうなと思った。

菜音くん家は夫婦でパン屋を営んでいる。

お店の1階が店舗で2階が住居として使っている。

「おお、こんなにいっぱい、ありがとうね」

真っ白な作業衣を着た菜音くんのお父さんにも喜ばれた。

菜音くんのお父さんは私の父と違い背が高く体格も大きい。

元々、格闘技をしていたがケガや故障で断念しパン屋を始めたらしい。

(力持て余してるんじゃない?)

そう思ったがパンをこねる時に

「ウォラー!」

バンッ!!

と、いい感じに力発揮してるみたい。

格闘家からパン屋とは中々凄い転職だが夫婦で作るパンはとても美味しく、私はここのお店のクリームパンが特に好きだった。

「ちなみに今日は心春ちゃん予定ある?」

ニコニコ笑顔のお母さんに聞かれた。

「いえ、ないです」

「ちょっと待ってね、菜音ー!菜音ー!」

呼ばれた菜音くんは少し不機嫌そうにやってきた。

「ほら見てこれ」

「なにこれ?」

「さやえんどう豆よ。心春ちゃん家がくれたの。あんたも好きでしょ?お礼言って」

「ああ、うん。ありがとう」

(あ、意外とこんなの好きなんだ)

この頃の菜音くんもおデブで丸くておにぎり継続してたので、お肉やお菓子しか食べてないんだろうなって勝手に思ってた。

「ほら、たまには遊んで来たら?どうせ家に居たってゲームばかりなんだから」

「えー!!!」

「お金渡すから2人で好きなケーキ買っておいで、2人の誕生日ケーキ。おやつに食べよ、ね!心春ちゃんお願いね」

「え?…あ…はぃ」

ぶつぶつ言いながらも菜音くんは着替えるから待っててと部屋に入っていき、準備を済ませてきた。

「お待たせ」
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