Mazzo d'amore
「世間が狭いと感じた事は沢山、ありますねー、今までにも何度も驚いた事が」

「えー、聞かせて聞かせて」

そう言うお二人に小学5年生で家庭訪問に翼先生が来た時の話しを始めた。

「相葉さんは係のお花係も部活動も頑張ってるから良いと思います。面倒見も良くて私も信頼してます。お家ではどうですか?」

「そうですね、お家でもよく家の手伝いをしていて助かってます」

翼先生は家庭訪問で親に学校での生活態度の話をしていた。

(手伝いじゃなくて労働ね…)

この話しを翼先生にしようかとも思ったが、口にしたらガチでヤバいやつだと思って母を守る為に口にしなかった。

「しかし、京香もすっかりお母さんになったな」

「え?」

「そう言う翼くんだって立派な先生になってビックリよ」

「え?え?2人知り合いなの?」

私は知らなかったので驚いた。

「私のお兄ちゃんが翼くんの同級生だったの」

「え?お母さんお兄ちゃん居たっけ?一人っ子じゃなかったの?」

「私が10歳の頃に亡くなってしまったんだけどね」

翼先生が授業でなぜ命の話しをしょっちゅうするのかがわかった気がした。

母は家庭環境があまり良くなく家で1人の時などは翼くん達に色々お世話になっていたらしい。

(そういや、ママのおじいちゃんおばあちゃん一度も見た事ないもんな)

父の祖母はよく会うが母方は一度も会った事も写真ですら見た事もなかった。

そしてこの年から母は段々と私に厳しさがさらに増していく事となった。

基本、親の手を借りなくても出来る事は自分でやらされるようになった。
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