Mazzo d'amore
夏休みが明け、父の暴力に兄が抵抗するようになった。

「やめろ!健太やめろ!俺が悪かったから!俺を殴るな!」

「じゃあ金取って行こうとしてんじゃねぇよ!テメェはパチンコなんかの娯楽の為に金無心してるんだろうがこっちは金を持って行かれたら明日死ぬかもしれねぇんだよ!命がかかってんだよ!」

そして父はそんな兄が怖くなったのか9月から家に帰って来なくなった。

そして、年が明けた1月2日。

兄の健太が暴走族仲間と店舗に侵入し窃盗をした際に逮捕され、余罪を含めてしばらく戻って来れないとなった。

「しばらくウチにおいで」

1月3日、私の心配をしてくれた翼くんが家に招待してくれた。

「これで良し」

翼くんは預かる事を私の父と母にわかるようテーブルの上に書き置きをした。

着替えを取りに家に帰るもメモはずっとそのままだった。

ただ、母からのお金は置いてあったので見たのは見たんだろうとはわかった。

冬休みが明け、翼くんの家から小学校に通うも父も母も連絡してこなかった。

そんなある日の日曜日。

翼に聞かれた。

「剛のおばちゃんと会うのが最後になるんだけど会いたいか?」

「え?最後って?もう会えなくなるの?」

「うん」

「なんで?」

「………………今日がおばちゃんの葬式なんだ」

「え……死んだの?」

私はそれまで死に直面した事など今までなかったが、それでも漫画やテレビドラマなどで見ていたので死については理解はしていた。

私は付いて行く選択をし翼くんの親に連れられてタクシーで向かった。

道中、剛くんのお母さんが交通事故で亡くなった事を翼くんのお母さんから聞かされた。

翼くんは車内で片手で顔を抑え泣いていた。
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