Mazzo d'amore
お葬式にはこんなに沢山の人、今まで見た事がないぐらい居た。

剛くんの顔を見たら沢山泣いてもう涙が出ないのか今にも死にそうな顔をしてたが、気丈に振る舞い喪主を全うしていた。

最後のお別れの時、棺にお花を入れる時が来た。

私は死んだ人を見るのが初めてで怖かった。

ずっと嫌がっていたが

「最後に見てあげて」

剛くんに優しい声でそう言われた。

「はい、これで良い?」

「うん」

翼くんに棺に入れるお花を渡された。

はじめは見るのが怖かったが、剛くんのお母さんは死んでるように見えなくて眠ってるようでキレイなお顔してた。

「さ、最後に……何か…言いな…」

翼くんや周りの人達もお花を入れた後に思い思いの言葉を言いながら入れていた。

「おばちゃんありがとう」

そう言ったがふと、剛くんのお母さんによく言われた言葉がある事を思い出した。

『私の事お母さんと思って良いからね』

私は最後の言葉はこれじゃいけないちゃんとしなきゃと思って言い直した。

「お母さん…あ…ぁ…ありがとねっ」

だけど、言い直した時は涙でちゃんと言えなかった。

そんな私に剛くんも泣きながら

「京香ありがと」

そう言ってくれた。

いつもはやんちゃする悪ガキ達もこの日はちっちゃい子供みたいに沢山泣きじゃくっていた。

(私は本当のお母さんが亡くなっても泣けるのかな?)

ふと、遠い空を眺め母の事を想った。

そして父が1月の終わり頃に私を迎えに来た。

「どうも…」

たった一言だけ言って私を連れて帰った。

翼くんの親に失礼極まりない態度だったが翼くんも翼くんの親も特にその事には触れず

「しっかり面倒を見てあげてください」

それだけ言った。

兄が捕まった事で心を入れ替えたのか仕事も始め、家をあまり留守にしなくはなった。

そうは言ってもギャンブル依存症の父はパチンコは辞める事は出来ず、お金は常にない状態でひもじい思いはしていた。
< 59 / 96 >

この作品をシェア

pagetop