Mazzo d'amore
「そんな龍之介くん何歳だったっけ?」

「えっと……当時は25歳だったと……」

「職業は?」

「幼稚園の先生」

「無理だよね?5歳が25歳と付き合う事は」

「でも、将来お嫁さんにしてって言ったら良いよって言ってくれたの!」

「だけどそんな近藤先生は?」

「………26歳の時、結婚しました」

みゆから現実が容赦なく飛んでくる。

当時6歳だった私の記憶が蘇ってきた。

幼稚園でみんなの前での結婚報告。

照れながらも嬉しそうに報告する近藤君に園児達は小さいながらにも各々に口にしていた。

「先生おめでとう!」

たくさんお祝いの言葉を言っていた。

私は小さいながらにも失恋したショックからその場から走り出した。

「龍之介くんの嘘付き!あたしをお嫁さんにしてくれるって言ったじゃないっ!」

私は一夜泣き明かした。

「次は?」

次は小学校に入学してから。

小学1年生の私は龍之介くんの失恋から立ち直った後、いつものように森のくまさんを歌いながら学校に通っていた。

「ある日、森の中くまさんに…」

ドンっ

すると私はまるでくまさんのような大きな背中の人にぶつかってしまい後ろに尻もちをついてしまった。

「ああ、ごめんね!大丈夫?」

そう言って、当時小学1年生だった私に西川翼(にしかわつばさ)君は私にそっと手を差し出してくれた。
< 6 / 96 >

この作品をシェア

pagetop