Mazzo d'amore
ブロック&フォール(嘘をついて)
9才になり、夏休みを迎えた。

(給食ないな……どうしよう)

昨年は剛くんや翼くんの家で過ごさせてもらったが、剛くんは遠くの高校に行き、翼くんの家にももうお世話になるのは申し訳ないなと子供ながらに思っていた。

そんな中、兄の健太が7ヶ月で少年院を仮退院してきた。

初犯との事で割と早いようだった。

「……ただいま」

「おかえりお兄ちゃん」

父は兄に怯えていたが兄はしっかり反省したのか大人しくなっていた。

そして兄は高校には通わず働き出した。

地元の先輩がやってる土建屋で汗水流して働きだした。

「ほら、これでご飯食べようや」

兄は日当でもらうお金で私や父にもご飯を食べさせてくれた。

ちなみに母はお金すら置かずに帰らなくなっていた。

もうずっと会ってない。

けど不思議と会いたいとは思わなかった。

父も兄と完全に仲は良くなったわけではなかったが、兄が家にお金を入れてくれるし、父も息子に変なプライドがあるのか負けじとお金を入れてくれるようになり円滑にまわりだした。

翌年の春。

段々と父が昔の父に戻って来だした。

兄が家に居る事から俺が居なくても大丈夫と思ってるのか家を留守にしがちになりお金も家に入れなくなっていった。

「ちっ!あのクソ馬鹿が!」

兄も段々と父に苛立ち、昔の仲が悪い頃に戻っていった。

そして父が色々な所からお金を借りて様々な金融屋が家に督促しに来たりした。

「わぁ!お花だ!」

「さっさと死んで俺らの葬式の花にしろってよ。舐めやがって」

金融屋からの嫌がらせとは知らず私は素直に喜んだ。
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