Mazzo d'amore
(あ、まだ私婚約者でいるんだ。まあそうだよね距離を置いてて別れてる訳ではないから元彼ではないもんな)

今の私達の関係性はなんなんだろと考えれば考える程おかしくてクスクス笑いながら歩いていた。

「かーのじょ!何してるの?なに楽しそうにしてるの?」

お店終わり知らない男性から声を掛けられた。

「仕事終わったので帰る所です」

「そんな帰らないでこの後飲みに行こうよ!」

「………ごめんなさい、待ち合わせしてるんで」

私はそう言って足早に光太郎の所に行って腕を組んで歩き出した。

「え?な、なんで?わかったの?」

「仕事終わり心配してくれてありがとね、さ、帰ろ」

光太郎はよくお店の近くで私が心配で待っててくれていた。

「でもこれ、別れてもやってたらストーカーだからね」

「さ、さすがにそれはしないよ。……え?と言うか別れないよね?ね?」

光太郎の問いに私はさあねと返した。

「結婚してください!」

「ごめんなさい」

「ああもうなんで!?昨日良い感じだったじゃん!」

「まだ足りない」

「初めて違う返事が来た」

50回目にして私にも徐々に心境が変わり出してきた。

私のせいで親と確執が生まれ、考える為と言って距離を置いたが私は別れるつもりでいた。

ただそれでも毎日執拗に来られる事で、徐々に自分の中で結婚しても良いのかなと思いはじめてきた。

親とか親族とか関係無しで結婚しても良いのかなと思いはじめてきた。

けれど60回、70回、80回とプロポーズされるもまだはっきりと答えは出せなかった。

99回目のプロポーズ。

「俺と結婚してください!」

「……………ごめん」

「むほー!なんで!?」

「好きなんだけどごめん」

私は泣き出してしまった。

一回目から光太郎と結婚したいと決まっている。

私は別れたくないのに別れたいと自分の気持ちを偽り、振られる方が良いと光太郎から別れを出されるように仕向け、でもそれでも私が好きだと変わらぬ気持ちをこんな卑怯な私に向けてくれてる。

ただただ真っ直ぐで純粋な気持ちで私を愛してくれている。
< 69 / 96 >

この作品をシェア

pagetop