Mazzo d'amore
アラスカ(偽りなき心)
カランコロン

今夜もMazzo d'amore(マッツォダモーレ)の扉が開く。

「いらっしゃいませ」

本日お越しのお客様は20代男性のお一人様。

「どうぞこちらへ」

席に案内したお客様へおしぼりを渡してご注文をいただきました。

「ビールで」

「かしこまりました」

お客様は何処か暗い様子で落ち込んでるように見えた。

仕事で失敗したのか恋愛で上手くいかなかったのかお金か人間関係かトラブルか…

こう言う時は相手をよく見てから話をする。

話しを私に聞いて欲しいのかそれとも一人静かに飲んで過ごしたいのか…

すると男性は深いため息をつきながら

「はぁあ…」



「あーあ!なんでかなぁ…」



「ほんっと…上手くいかねぇなぁ…ねぇ?そう思わない?」

と、最終的に聞いて来られました。

(うっわ…めんどくせ…)

いくらお金を払ってるお客様でも相手にしたくないお客様も私にだっているもんで。お客様がお店を選ぶように私もお客様を選びたい。

絡み酒は嫌なんですよね。

せっかくのお酒や料理が不味くなる飲み方は私は嫌い。

「どうされたんですか?」

「どうもこうもねぇよ…たくよー」

そう言ってお客様は下を向きしばらくしたら声を発しました。

「フラれたんすよ」

「あらら…そうだったんですね…」

「お姉さん!慰めてよ!俺の彼女になってよ!」

「ごめんなさい、私、既婚者なので」

すると男性はすぐにビールを飲み干しておかわりを要求してきた。
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