Mazzo d'amore
ダイキリ(希望)
カランコロン

今夜もMazzo d'amore(マッツォダモーレ)の扉が開く。

「いらっしゃいませ」

本日はMazzo d'amore(マッツォダモーレ)開店の日。

初めてご来店していただいたお客様は、この日この時を待ち侘びていた、相葉光太郎とそのお母様の濱谷時子(はまたにときこ)さん。

「おめでとう」

「ありがとう。どうぞこちらへ」

私はお二人をカウンター席へ案内し、おしぼりを出した。

「素敵なお店ね」

おばあちゃんは店内をキョロキョロ見渡しながら笑顔で言ってくれた。

「ありがとう、おばあちゃんも退院おめでとう」

「母さんも喜んでるだろうな、ずっと自分のお店を持つ事が夢だったから…」

「どうだろうね…そうだったら良いけど」

感慨深くモノを言う父にそっと私はビールを差し出した。

「ありがとう」

「おばあちゃんもお酒飲む?」

「私はいい、いい!お茶ちょうだい」

「烏龍茶で良い?」

「うん」

大きめのグラスに氷無しで渡した。

「ありがとう、年寄りは冷たいのが苦手だからね」

「うふふ、こちらはあちらのお客様からになります」

そう言って父を手の平で紹介した。

「あら、そうなのありがと。お兄さん良い男ね」

「え!?ここでそのセリフ使うの!?実の母親に?若くて可愛い女性にお酒を奢るんじゃなくて?」

「当たり前でしょ」

親子3人クスクス笑った。

カランコロン

「いらっしゃいませ」

「おいー!光太郎久しぶりだなー!お前またおでこ広がって来てんじゃねぇか?おい?」

そう言って入店1番、剛さんは父の頭をこねくり回していた。

「おめでとう、心春ちゃん。これお店のお酒に入れておいて」

「ありがとうございます、わぁ、高そうなお酒。これで美味しいハイボール作れそうです」

明菜さんがウィスキー山﨑をくれた。

「じゃあ、早速俺はそれでハイボール貰おうかな」

「私はそうねぇ、たまにはビールをいただこうかしら」

そう言う二人にお酒を提供し、

「かんぱーい」

そう言ってグラスを合わせて飲んだ。

「なんだよ、光太郎泣くなよ!さっきからずっと泣いてんじゃん」

父は剛さんが頭をこねくりまわしてからずっとグズグズ鼻水をすすりながら泣いていた。
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