俺様ドクターの溺愛包囲網
手術の同意書にサインをし、廊下でオペが終わるのを待つ。中に入って、五時間は過ぎたと思う。
けれど手術中のランプは、一向に消える気配がない。まだだろうか。先生を信じているけど、やっぱり不安で仕方がない。
それから少して、手術中のランプが消えた。それとほぼ同時にオペ室の扉が開き、中からオペ着に身を包んだ先生が出てきた。
「日比谷先生」
私の方へまっすぐ歩いてくる。
「オペは成功した。あとは意識が戻るのを待つだけだ」
「あの、戻るんでしょうか?」
「戻ることを信じよう」
それはつまり、保証できないってこと? そんな……。もしこのまま意識が戻らなかったら……。乾いたばかりの瞳に、またじわじわと膜が張る。
「お前が信じてやらないでどうする。大丈夫、あいつは強い男だ」
涙ぐむ私の頭に、先生がポンと手を置く。大きくて温かなぬくもりに、胸の奥がきゅうっと締め付けられる。
「もうすぐ出てくると思うからついててやれ」
「はい……」
普段と変わらない様子で先生は再び中へ戻っていく。その背中を見つめながら、私は真宙が出てくるのを待った。