俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~


きっと声は届いているんだろう。

「また先生に勉強みてもらうんでしょ? 起きてよ真宙」

何度かの声掛けの後、真宙はうっすらと目を開けた。

「気が付いた?」
「ん……っ」

オペ後で声が出しずらいのか、よく聞き取れないが、だんだん意識がハッキリしてくるのが、私の目からでもわかった。すぐさま、日比谷先生がペンライトで真宙の瞳孔を確認し始める。

「真宙、聞こえるか? お前は自転車で事故にあって、病院に運ばれたんだ」
「あー……そういえば」

日比谷先生の問いかけに、真宙が反応を示す。よかった、生きてる。真宙が、しゃべってる。

「しばらくは入院が必要だが、これだけ意識がはっきりしていれば大丈夫だろう」
「よかったぁ」

ホッとして、ベッドの柵につかまったまま、よろよろとしゃがみ込んだ。真宙までいなくなったらどうしようと、絶望感でいっぱいだった。神様はなんて残酷なんだって恨んだりしたけど、それもこれも先生のお陰。

「先生、本当にありがとうございました、先生が手を尽くしてくれたから」
「俺じゃない。真宙が頑張ったからだ」

ぶっきらぼうな口調だが、真宙を見つめる目はとても優しい。

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