俺様ドクターの溺愛包囲網


「嫌だったか? 顔がにやけてるぞ」
「なっ……それは」

なにこのムードのかけらもないキス。だいたい先生の口から肝心なことが聞けていない。

「あの、先生もその……私のこと好きってことでいいんですか?」
「聞きたいか?」
「聞きたいですよ、もちろん」

というか、どんだけドSなんだろう。聞きたいかって。でも、そういうところも好き。 

前のめりになりながら先生の言葉を待っていると、先生がふっと口元をゆがめ笑うのが見えた。
その顔すらかっこよくて見惚れてしまう。

すると、お決まりかのように、先生の携帯が鳴った。なぜこのタイミング! 

「はい、日比谷だ」

しかも電話一本でドクターの顔に戻ってるし。

「わかった、すぐいく」

先生は電話を切ると、涼しい顔でベンチを立った。

「悪い、呼び出された。緊急オペだ」

ですよね、ですよね。私たちはどうせそういう運命にあるんですよ。もう驚きませんよ。

「いってらっしゃい」
「また連絡する。それと、今度会ったときはこんなんじゃ済まないからな。覚悟しとけよ」

え? 覚悟?

「じゃあな」

先生は意地悪な笑みを浮かべると、白衣を翻し颯爽と行ってしまった。

か、覚悟って……。やっぱりそういうこと?途端にドキドキし始めた私は、いまだ先生の感触が残る唇に触れながら、しばらくその場で呆然としていた。


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