俺様ドクターの溺愛包囲網


要先生は変わらない様子でエスカレーターの方へと駆けていく。その姿を見てやっぱり日比谷兄弟は掴めない人たちだと改めて思う。

だけどよかった。これで堂々とできる。要先生があっさりしていたことに感謝だ。そもそも本当に私のこと、好きだったのだろうか。

「あの、そういえばさっき言っていたあの人っていったい誰なんですか?」
「あぁ、母親のことだよ」
「お義母さん?」

そのフレーズだけでドキドキしてしまう。

「ちょっと曲者で面倒な人なんだ」
「曲者、ですか……」

先生が言うくらいだから相当な曲者に違いない。どうしよう。急に怖くなってきた。こんな一般庶民と付き合っているって知ったら反対するんじゃ? 日比谷先生は、ここの跡取りなわけで……。それに、彼は養子。お母さんとの確執とかもあるのでは。

せっかく思いが通じ合ったのに、この恋は一筋縄じゃいかないのかも。そう思うと、途端に不安が押し寄せた。

◇◇◇

先生のお母さんってどんな人なのだろう。あれからずっと考えていた。けれど何もつかめないまま三日が過ぎた。少し忘れかけていた頃だった。

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