俺様ドクターの溺愛包囲網
「あら、ありがとう」
「いえ」
それを手渡すと、一礼して踵を返す。けれどすぐ「ねぇ」と呼び止められた。
「は、はい」
「あなたどこの所属? 私服ってことは秘書さんかしら」
「そう……ですけど」
いきなり質問を投げかけられ、その場でキョトンとしてしまう。その間にも、女性はジロジロと上から下までなぞるように私のことを見ていた。
「あの、何か……?」
あまり感じのいいものとは言えず、堪えきれなくなった私は、思わず不機嫌な声を上げてしまった。
初対面の人をここまで見る必要がある? 珍しいものじゃないでしょうに。
「あなたお名前は?」
「脳外科の医局秘書をしております、宮永と申します」
「あぁ、あなたが。要から聞いたわ」
えっ!? 要って、要先生のこと? どういうこと? もしかしてこの人……。そういえばよく見ると目元が要先生に似ているような。
「ちょうどよかった。あなたも今度の会食に来てくれない? 場所と時間は追って連絡させるから。それじゃあ」
「え! あの!」
再び歩を進め始めた女性に慌てて声をかける。
「なに?」
「あの、会食って、その……」