俺様ドクターの溺愛包囲網


「ただいまー」

仕事を終え家に着くと、自然とホッと安堵の溜息がこぼれる。今時のおしゃれな家じゃないけれど、両親が残してくれたこの平屋の家が私の安息の地。

「お帰り。姉ちゃん」

リビングから私を出迎える真宙の声が聞こえる。ドアを押し開け中に入ると、こたつで勉強する真宙の姿があった。

「真宙、今日は早かったんだね」
「うん。試験前だから」

ノートに視線を落としたままそう答える真宙は私の弟で、高校三年生。受験を控えた大事な時期で、部活を引退したあとから真宙は勉強に力を入れている。

「お腹すいたでしょ、今ごはん作るね」

コートをハンガーにかけ、エプロンに付け替えると台所に向かう。今日は厚揚げともやしの卵とじ丼。これも私が得意とする節約料理のひとつ。コスパがいいし、食べ盛りの男の子でもお腹いっぱいになるから、頻繁に作っている。それに汁物をつければそれなりの夕食になる。

「真宙、できたよ。テーブルの上片付けて」

ものの30分で準備を終えると、こたつに料理を運ぶ。真宙はそれを待ってましたと言わんばかりに箸をつけていた。

「うん! うまい!」


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