俺様ドクターの溺愛包囲網
「院長の体調悪いから、代わりに院内の視察してるんだって。今まであまり表舞台に立つ人じゃなかったから、見たことない人が多いみたいだけど」
確信したら急に胃が痛くなってきた。しかも完全にロックオンされちゃったし。
「美和~どうしよう。私、会食に呼ばれたんだけど」
「えー! どうしてそんな展開に?」
「実は、先生と付き合うことになって。たぶんそれを知って誘ってきたんだと思う」
「なるほど。それはきっと公の場で、張り付けの刑にする気ね」
「変なこと言わないでよー」
泣きそうな声で反論する。美和の奴、すぐそうやっておもしろがるんだから。こっちはすでに胃が千切れそうなのに。
「日比谷先生も一緒なんでしょ? 守ってくれるでしょ」
「そうかなぁ」
「そうじゃなければそんな男やめなさい。女一人守れない男なんてクズよ」
美和の毒舌に思わずふふっと笑いがこみあげる。だけど同時に勇気が出た。そうだ、今うだうだ考えたところで、どうしようもない。やるしかないんだ。例え周りに反対されたって、私は先生と一緒にいたい。
「ありがとう美和。なんか勇気出た」
「あら、私は何もしてないけど」
あっけらかんとする美和にかぶりをふると、よしっと気合を入れた。