俺様ドクターの溺愛包囲網
がつがつと流し込むように食べる真宙を見ていると、思わず笑みがこぼれる。けれど同時に申し訳ない気持ちにもなる。
本当はもっと肉や魚を使った料理を食べさせてあげたい。でも、私一人の稼ぎじゃやっぱり難しいものがある。
私の両親は三年前に他界した。それも二人同時に。交通事故だった。その時私は二十二歳で真宙は十五歳。突然両親を亡くした私たちは途方に暮れ、悲しみに打ちひしがれた。
でも泣いてばかりじゃ居られなくて、私は弱りきった心を奮い立たせ、両親の代わりに真宙を立派に育ててみせると、仏壇の前で誓ったんだ。
まずは激務だった職場を退職した。大学卒業後、念願だった広告代理店で働いていたが、とてもじゃないけれど家事と両立できるような職場じゃなかった。休日出勤は当たり前な上、一か月の残業時間も相当なもので、はっきりいってハードな職場だった。だから土日休みの、残業時間が少ない今の職場に転職した。
弟を立派に育て上げるまで、日比谷先生になんと言われようと辞めるわけにはいかないのだ。
「あ……そうだ、姉ちゃん」
いただきますと手を合わせたところで、真宙が申し訳なさそうな表情で口を開いた。