俺様ドクターの溺愛包囲網
シートベルトをしめていると、隣から申し訳なさそうな声が届いた。
「いえ。お義母さんとお話できてよかったです」
私もいろいろと誤解していた部分もあったし、それが解けてよかった。
「そういえば先生、お義母さんのこと、曲者だって言ってませんでした? 優しい方じゃないですか」
そう問えば、先生は「あー」と思い出したように声を上げる。
「曲者だよ。あの人は。母性が強いのか、最初からやたら愛情を押し付けてきて、今でもそういうところは変わってない。心配症でしょっちゅう連絡してくるし、大量の荷物を送ってくることもある」
曲者って、そういう意味だったのか。なんとなく納得。
「そういう母親だから、お前に敵意が向けられるのも心配した。まぁ、そうなれば全力で守るつもりではあったけど」
「あ、ありがとうございます……」
先生は何気なく言ったつもりなのだろうけど、私は思いっきりドキドキしてしまった。先生って普段ドSなのに、不意打ちで甘くなるから反則だよ。
「学校にもこっそり見に来たりしてて、友達によく笑われたよ」
確か先生が引き取られたのは中学生の時だと言っていた。