俺様ドクターの溺愛包囲網
「ん? なに?」
「冬期講習のお金さ、明後日までなんだけど……」
そう言われハッとする。そういえばそんなプリントが学校からきていたような。勢いよく頭の中で電卓をはじく。給料はまだまだ先。どこから捻出しよう。
「姉ちゃん、無理しなくていいから。別に俺、そんなの受講しなくてもいいし」
「ダメだよ。絶対に受けたほうがいい。真宙はお金の心配なんてしなくていいから」
思わず早口になる。そんな私を真宙が心配そうに見ていた。
もしかしたらあれこれ考えているうちに、不安そうな顔をしていたのかもしれない。いけないいけない、と自分をいさめニッと笑ってみせる。
「これでも案外いいお給料もらってるんだから。大丈夫よ」
そう言うと真宙は少しの間の後「うん」と頷いた。
「ほらほら、食べて。まだおかわりあるから」
「マジ? やった」
お茶碗を差し出す真宙の笑顔にホッとする。真宙にはちゃんと大学を出てほしい。両親がいないからといって、不憫な思いはさせたくない。それにせっかく賢い頭をもらって生まれてきたんだから、それを活かしてほしい。私が頑張らないと。両親に代わって、真宙を立派に育てるんだ。