俺様ドクターの溺愛包囲網


「ん? なに?」
「冬期講習のお金さ、明後日までなんだけど……」

そう言われハッとする。そういえばそんなプリントが学校からきていたような。勢いよく頭の中で電卓をはじく。給料はまだまだ先。どこから捻出しよう。

「姉ちゃん、無理しなくていいから。別に俺、そんなの受講しなくてもいいし」
「ダメだよ。絶対に受けたほうがいい。真宙はお金の心配なんてしなくていいから」

思わず早口になる。そんな私を真宙が心配そうに見ていた。

もしかしたらあれこれ考えているうちに、不安そうな顔をしていたのかもしれない。いけないいけない、と自分をいさめニッと笑ってみせる。

「これでも案外いいお給料もらってるんだから。大丈夫よ」

そう言うと真宙は少しの間の後「うん」と頷いた。

「ほらほら、食べて。まだおかわりあるから」
「マジ? やった」

お茶碗を差し出す真宙の笑顔にホッとする。真宙にはちゃんと大学を出てほしい。両親がいないからといって、不憫な思いはさせたくない。それにせっかく賢い頭をもらって生まれてきたんだから、それを活かしてほしい。私が頑張らないと。両親に代わって、真宙を立派に育てるんだ。



< 14 / 174 >

この作品をシェア

pagetop