俺様ドクターの溺愛包囲網
◇◇◇
「五万かぁ……」
翌日。持参の弁当を開きながらデスクで小さく溜息をつく。
昨夜あんな大口を叩いたけど、けっこうな痛手だ。他にバイトをすることも考えたが、ここは副業禁止。今クビになるわけにはいかない。
「宮永」
昨日の残り物を詰めただけのお弁当に箸をつけたところで、背後から声を掛けられた。
慌てて振り返ると仁王立ちした日比谷先生がいた。
「ひ、日比谷先生。なんでしょう?」
「これ、郵送しておいて。速達で」
「あ、はい。わかりました」
差し出された封書を受け取ると、再びお弁当に手を付ける。けれどなぜか背後からの視線は消えず、そろりと再び振り返れば、日比谷先生がデスクにあるお弁当を興味深そうに見ていたのんだ。私は咄嗟に背中を盾に隠した。
どうしてそんなに見ているのだろう。こんな質素で茶色いお弁当に興味でもあるのだろうか? ほとんどの社員が社食や外でランチをしている中、こんなふうにデスクでお弁当をつつくのは私くらいだ。それだけでも恥ずかしいのに……。
「あの……まだ何か?」
もしかしてバカにしてやろうとでも思ってるのだろうか。