俺様ドクターの溺愛包囲網


「お疲れ。ちょうどよかった。今から来てもらいたいところがある」
「来てもらいたいところ……て、えぇ!?」

聞き返したのが早かったか、肩を抱かれたのが早かったか、先生は私をどこかへ連れ出す。

「あの、どこへ?」
「親父のところ」
「院長ですか!?」

お義母さんの次は院長って。そんなこといきなり言われても、緊張するではないか。院長とは入社日以来会っていないし、まさに雲の上の存在。そんな院長といきなり、しかも息子の彼女として会うことになるなんて。心の準備が……。

「要に聞いたらしくて、お前に会わせろって朝からしつこいんだ。このままじゃ業務に差し支えそうだからさっさと終わらせる」

相変らず横暴なんだから。しかも病気のお父さんに対してその言い方。心の中でぼやいていると、とある部屋の前で先生が足を止めた。見れば、ビップ専用の病室の前だった。院長、ここに入院していたんだ。

「親父」

先生はノックもせずいきなりドアを勢いよく開けた。そして「来たぞ」と不愛想な口調で言いながら中へと入って行く。不安にかられながら、私も先生のあとをおずおずと追う。

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