俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~
だいたい院長、話はできるのかな。やせ細って座ることもできないんじゃ……。なんて声をかけたらいいんだろうと、不安を抱えたままおそるおそるベッドに近づく。
「やっと来たな」
だが私の予想を反し、院長はニコニコと菩薩のように微笑み、ベッドの上で嬉しそうに手招きをしていたのだ。しかも病人なのにきちっと髪を整えていて、見た目はダンディなおじさまと言った感じ。もしかして、今日は体調がいいのかな?
「あの、宮永彩と申します」
「そんな堅苦しい挨拶いらんいらん」
言いながら豪快に笑う。まともに話すのは今日が初めてだけど、こんなフレンドリーな人だったんだ。要先生の性格はお義父さん譲りなのかもしれない。
「可愛いお嬢さんじゃないか。颯士」
「これで気が済んだか。こっちは忙しいんだ」
嬉しそうな院長を、日比谷先生は冷たくあしらう。その態度にこっちがヒヤッとしてしまう。院長は病人なのだから、もっと優しくできないのだろうか。
「ほれほれ、宮永さん。もうちょっとこっちに来て顔を見せて」
「え? あ、はぁ」
おずおずとベッドに近寄れば、院長はまじまじと私をのぞき込んだ。