俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~
「うん、芯が強そうな顔をしてる。死ぬ前に君に会えてよかったよ」
その言葉にドクっと心臓が浮き上がる。死ぬだなんて……そんな縁起でもない。けれどかける言葉も見つからず、ぎゅっと唇を結び引く。
「颯士にまさかこんなかわいい彼女ができるなんてね。こいつは昔から頑固で。誰の手も取ろうとしなかった。そんな颯士が誰かを好きになるなんて、僕は嬉しいよ」
尻すぼみになる声。もしかして泣いてる? 私まで切ない気持ちになって、目の奥が熱くなった。やっぱりもう長くないという噂は本当だったんだ。
「宮永さんは、颯士のどこがよかったんだい?」
「え?」
「こんな不愛想な男で大丈夫かな」
心配げに私を見つめる。親心として、私の口から言葉でちゃんと聞きたいんだろう。ここは照れている場合じゃない。
「日比谷……いえ、颯士先生はすごく心が暖かくて、尊敬できる人です。もちろん、医師として、一人の男性として。そんな彼を心から慕っています」
院長に向かって真っすぐそう言う私を、日比谷先生がじっと見ているのを感じる。めちゃくちゃ恥ずかしいけど、死期が近いお義父さんを安心させたい気持ちの方が強かった。